刀剣乱舞

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第六話

──アンタは、主の何になりたいんだ。写しから投げかけられた問いへの答えはまだ無い。そもそも、それはなりたいと思ってなるものなのか。願われたかたちであることが俺達ではないのだろうか。「今日は焼きいもびらきの日です!」朝食のときに審神者がそんな...
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第五話

今日の部隊編成は普段と違う顔触れだった。鶴丸国永が隊長、今剣に小夜左文字、宗三左文字、山姥切国広、そして俺──山姥切長義。俺と写しが同じ部隊になったことは一度きりしかなく、その際にあった一悶着のことを思うと今回の編成に誰かの思惑を感じずには...
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第四話

別れの日を思い出す。とはいえ、あの子は俺といつ別れたのかなんて覚えていないだろう。たとえ覚えていたとしても、俺と彼女が思う最後の日が一致することはない。なぜならあの子は、あの日、床の間に飾られていた一振の刀が何なのかなんて、覚えているはずが...
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第三話

朝食のとき、視線があったことを偶然だと思えなかった。言葉を交わすには遠い距離で、確実に何かの意図があっての眼差し。だからその日のうちに彼の方から声を掛けられたときにも驚きはなかった。「山姥切、ちっくと時間ええか?」「あぁ、分かってるよ」午前...
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第二話

俺を見つけると目を輝かせて笑う姿が可愛らしいと思う。「お兄ちゃん、これ見て!」たった数日一緒にいればこの子どもが人懐こい性格だというのはすぐに分かった。初対面のときは単に緊張していただけで、丸一日、次の日も朝から傍に、と時間を重ねていけばそ...
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第一話

「写しは偽物じゃない」偽物くん。そう呼べば当の本刃はため息をついてお決まりの台詞を吐いた。いつだって彼はそこから何も言い返しはしない。そのことが余計に俺を苛立たせているのだと知らずに。「……長義さん」「──啓」気付かなかった存在に息を呑んだ...
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やっつの約束とすえひろがり(仮)

唆されて家族の元に行こうとした啓が遡行軍を呼びよせてしまう話。こうして、彼女の家出は幕を閉じた。時代を越え、政府を巻き込み(あるいは巻き込まれ)、第一部隊をあらゆる意味で壊滅に追いやった三日間の家出は、なんとか誰かを失うことなく終わった。彼...
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欲求不足

何度も触れたことのある髪を梳いて、石鹸が香る身体を引き寄せた。こちらを見上げる視線、僅かに開いた口元が赤く濡れ艶めいて見える。そこに顔を寄せようとして──「ちかい……」「………」(近い、か?)普段からの触れ合いの延長だと思っていた。今剣がぴ...
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山姥切長義は踊る

※連載「たった一つの星であれ」に出てくる別本丸の山姥切長義含め、4振りの山姥切長義がいます。「ペドかよ」そう言い放ったのは政府に所属する山姥切長義Aだ。彼はこの中で最も古くから人の形を得た個体で、政府にいる山姥切長義の中でも古株の一振りであ...
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自分だけの日:二年目

めでたい日やき、と陸奥守は言った。酒について、長義は政府にいた頃から付き合いで飲むことはあっても自分から進んで飲むことは無かった。それはこの本丸に来てからも変わらない。幸い、この本丸には相手に飲酒を強要する刀はおらず、目の前の彼だってどんち...